人工知能と産業・社会
〜第4次産業革命をどう勝ち抜くか〜
まとめ
これまでの人工知能ブームと、近年話題になっている人工知能はどう違うのか。その応用性や社会に与える影響を、政治家の視点でわかりやすく説明、予測を行っている。人工知能の背景や将来を知る入門書として良い本。
- 第1次AIブーム:機械学習、パーセプトロン、探索木
- 第2次AIブーム:知識ベースと推論機構(ベイジアンネットワーク)を組み合わせて、問題に対する答えを導き出す。Siri、機械翻訳などのエキスパートシステム。
- 第3次AIブーム:ディープラーニング
- 探索木のアルゴリズムで解決できるのはごく一部の単純かされた問題のみ。
- 第2次AIブームにおける課題は、組み合わせが多層になる場合に正解を見つけるための探索の組み合わせが爆発してしまう。効率的に正解を見つける方法が必要だった。
- 知能とは何か?
知能とは環境適応能力のことであり、判断力・理解力のこと。学習能力、思考能力はあいまいな定義であり、人工知能の定義もあいまいである。 - 知能は試行錯誤により構成されるもので、外界との相互作用のなかで洗練されていくもの。適応は動的であり、知識は静的である。
- 機械学習は、教師あり学習と教師なし学習に分類される。教師あり学習とは、入力に対する正しい出力(訓練データ)が与えられてそれを再現するパラメータを決定する方法。教師なし学習とは、入力データのみが与えられて類似性の近いものをグループ分けする方法。正解はなく、最終的にいくつのまとまりに分けられるかが重要。
- 強化学習とは、与えられた入力データにたいして出力を生成し、その出力にたいして報酬を与えて、報酬が高くなるような出力を試行錯誤して探す方法。正しい出力を与えられている分けではないので、教師あり学習とは異なる。
- これまでの人工知能は「概念」(対象のもつ特徴の総和)を理解することはできなかった。すなわちチューリップの花が赤いことを覚えられても、チューリップとはどういうものかを理解することはできないので、様々な花がある中で赤いチューリップを見つけることはできなかった。ディープラーニングによりそれが可能となった。
- 第3次AIブームを引き起こしたディープラーニングによって、AIが人間の知能を超える「シンギュラリティ(技術的特異点)」を引き起こす可能性が出てきた。
- ディープラーニングは教師なし学習に分類される。従来扱われてきたよりも多層のニューラルネットワークを活用し、入力と出力を同じものにする「教師なし事前学習」により各層を学習させいく。
- ディープラーニングを学習教材に応用した、アダプティブ・ラーニングの導入の社会的メリットは大きい。生徒にとっては、取りこぼしをなくし空いた時間で創造的発想やディベート力を養うことができる。先生は、平均的な生徒に向けた画一的な授業ではなく、個々の生徒の進み具合に合わせた授業ができる(最適化カスタマイズ学習)。またこの仕組みを提供する企業は、能力をもつ人材を効率良く発掘することができるメリットがある。